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『神の啓示に関する教義憲章』概説
和田 幹男 


 第2章 神の啓示の伝達について(7−10項)解説(要約)

第2章 神の啓示の伝達について(第7−10項)

キリストにおいて完成した啓示の伝達を担うもの(第7項):
 啓示が歴史の中でキリストにおいて完成したというなら、 それは、ある時代に、ある地域で完成したということである。 その啓示があらゆる時代と地域の人間に向けられたものだというなら、 それはその後の全世界の人間にいかに伝達されるのかが問題となる。 この問題は、啓示そのものと同様に重大である。その伝達の道を確かめておかないと、 キリストから時代的、地域的に離れたわたしたちは啓示そのものに到達しそこなうかもしれないからである。
 そのことを自覚してキリストは、生前に直接に12使徒とその頭ペトロを選び、 ご自分の教えと使命を教え、ご自分の死後その教えを伝え、使命を続けるよう派遣された。 このようにキリストにおいて完成された啓示はペトロを頭とする12使徒が指導する教会に受け継がれた。 この原初的な教会の伝承が使徒伝承と言われる。 ペトロを頭とする12使徒たちもその生前にキリストから受け継いだ教えと使命をつぎの世代に受け継がせた。 こうしてペトロの役職はその後教皇に、12使徒団の役職は司教団に受け継がれた。 このつぎの世代以降の教会の伝承を教会伝承という。こうして使徒伝承は教会伝承をとおして受け継がれ、 その中でキリストにおいて完成された啓示が伝達されている。

聖なる伝承の本質(第8項):
 伝承をいかに理解すべきかを反省する。 伝承は教会という信仰共同体の命と理解する。この命があるから、 その証しとして個々の具体的な諸伝承、つまり諸公会議の決議や教父たちの著作、典礼の慣習などがある。 このように伝承そのもの(La Tradition,the Traditon)とその証しとしての諸伝承 (les traditions,traditions)を区別したところに、この公会議の伝承理解の新しさがある。 この共同体の生命活動によってキリストにおいて完成した啓示はあますところなく忠実に伝達されると共に、 その受容者の中で啓示は発展もする。

聖なる伝承に中で聖書とは何なのか(第9項):
 第2ヴァティカン公会議以前のカトリックでは、 啓示の源泉は聖書と聖伝(聖なる伝承)であると教えられてきた(古い公教要理参照)。 これはプロテスタントに対する主張であった。この公会議では、啓示の源泉は神であるから、 啓示の源泉は聖書と聖伝とは言われない。これらをキリストにおいて完成した啓示を伝達するものとして位置づける。 前項で伝承の意味を捉え直した上で、その意味で伝承は啓示を「あますところなく」伝えるのものとされる。 この伝承と密接に結びついたものとして聖書があり、これは神の啓示を書に書きとめたものとして、 時代を超えて啓示を「忠実」に伝えるものである。聖書は使徒伝承を使徒伝承の時代に書に書きとめたものとして、 その本文を書き変えない限り、キリストにおいて完成した啓示を伝える。このように伝承と聖書は両者とも尊敬すべきものである。

伝承と聖書の相互関係および教会に対する両者の関係(第10項):
 伝承と聖書、それにすべての信徒を含む神の民としての教会全体がキリストにおいて完成した啓示を生きたものとして伝達する。 ここで教会憲章において見直された教会との関連が言われている。

 拙著『わたしたちとって聖書は何なのか』―現代カトリック聖書霊感論序説―、女子パウロ会、1986年、67−110頁参照。

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